4.「元帳」の事例

1)利害関係者マップ「ヒト」(例:輸入製造卸業の場合/部門レベル)

上記は、輸入品を主軸としたメーカー業と卸売業を行っているある事業部に関して、社内や取引先など事業部の利害関係者をプロットし図示化したものです。図示化するだけで、事業部のビジネスモデルを把握することができます。

また、上記に現在の課題や問題点をプロットすることで、業務改善の情報共有ツールとして活用することができます。さらには情報や商品、お金の流れなどを追加することで、複雑に絡み合った座組みを把握することができ、改善に向けての議論の下地とすることができます。

課題や問題のある対象が絞られた場合、次のページの業務機能関連図でさらに深掘りすることができます。

2)業務機能関連図「ヒト」(例:金融業の場合/業務レベル)

上記は、ある金融機関の特定の業務にスポットを当て、さらに深堀をした例です。基本的な見方は、縦軸が組織で横軸が時間です。時間は左から右に流れる設定になっています。ひとつの作業をブラックボックスとして配置し、情報や商品、お金の流れをプロットします。現場で使われているシステムが明確な場合は、システム名もプロットすることができます。

ここまでの深堀は経営者レベルでは必要ないと思われますが、課題や問題点など、抜本的な改善が必要な場合この業務機能関連図を作成すると、本来はどのような形でどのような流れのほうがよいのか直感的に把握することができます。

3)拠点間システムネットワーク概念図「モノ」(例:金融機関/全社レベル)

上記は、ある金融機関の拠点と取引先、データセンタに契約している現在の通信回線をプロットし図示化したものです。障害対策で二重化など複数回線を契約している場合は、その本数分をプロットします。この図を作成するだけで、拠点間の通信回線の優先順位や重要性などを直感的に把握することができます。

経営戦略に従って、国内拠点の新設や海外進出など拠点の変化がある場合、社内外の関係者間で情報共有のツールとして活用ことができます。このマップに通信回線の契約情報やデータセンタの情報、各拠点の情報基盤の情報などをプロットすることもでき、現状の把握をできることはもちろんのこと、今後の展開を関係者全員で議論することもできます。

4)主要取引先の支払俯瞰図「カネ」(例:商社/全社レベル)

上記は、システムに関する主要取引先への支払い実績を図示化したものです。

財務諸表で投資や費用は管理されていますが、会計の分類(勘定科目)にはシステムに特化したものが少ないので、いざシステムだけに関係する費用を抽出しようとすると意外と難しい会社が多いのではと想像しています。上記を作成するためには、支払い実績からシステムに関する費用を抽出し、保守費や通信費、リース料、消耗品などに分類する必要があります。システム関連の主な取引に関してこの作業を行うことで、大まかな会社全体のシステム費用を把握することができます。

情報システムのコストというと、システム開発費とかシステム投資を頭に思い浮かべる人が多いかと思います。情報システムは、導入時のみ費用が掛かるのではなく、日々運用しているときも維持管理費用は発生していますし、システムの利用を止め廃棄するときには撤去費用などが発生します。情報システムのコスト管理としては、システムの導入から廃棄までのトータルにかかる費用を管理すること、管理できることが重要となっています。